第71回日本輸血・細胞治療学会学術総会

総会長挨拶

 第71回日本輸血・細胞治療学会学術総会を2023年5月10日(水)から13日(土)の4日間にわたり,幕張メッセで開催いたします.第65回学会総会(2017年)に千葉県赤十字血液センター 浅井隆善先生が開催されて以来の幕張メッセでの開催となります.5月の大型連休明けのお忙しい中での開催となりますが,海風が心地よい季節に,風光明媚な場所において,このような歴史のある学術総会を開催させていただく栄誉をいただき,ご協力,ご指導いただきました理事長 松下 正先生をはじめ学会員の皆様方に心から御礼申し上げます.特に,事務局長として様々にご指導いただいた東京大学輸血部 岡崎仁先生,また,企画立案にご指導いただきました奈良県立医科大学 輸血部,血液内科 松本雅則先生,東京大学医科学研究所 セルプロセッシング・輸血部 長村登紀子先生を始めとした多くのコアメンバーの先生方のご支援により,充実したプログラムを企画できましたこと,改めて御礼申し上げます.

 本学術総会のメインテーマとして,「患者を救う!適切な輸血・細胞治療(Appropriate transfusion and cell therapies for better patient outcomes!)」を設定し,それに沿った多くのプログラムを企画させていただきました.近年,日本輸血・細胞治療学会では,理事長 松下 正先生のご指導の下,多くの輸血・細胞治療に関するガイドラインが策定され,最適な輸血療法の指針を広く提示するところですが,私自身は,「大量出血症例に対するエビデンスに基づいた輸血ガイドライン」を,輸血・細胞治療学会のみならず,多くの関連学会の先生方にご尽力いただき,策定させていただきました.また,国立循環器病研究センター時代には,主に心臓血管外科手術領域における輸血療法について,臨床,研究を行っておりました.これらの過程で,輸血・細胞治療は,適応患者における未だ唯一無二の治療として,大きなポテンシャルを持ち,患者予後改善に貢献する重要な医療であることを身に染みて実感いたしました.また,日本赤十字社に移り,この重要な医療が,多くの職種の方々に支えられたチーム医療として,初めて成立するものであることを改めて認識しています.よって,今回の学術総会では,今後さらに,患者予後改善に適切な輸血・細胞治療をどのように進化(深化)させていくのかをテーマとして,皆様方と議論を深められればとの思いで様々なプログラムを企画させていただきました.

 大量出血症例に対する輸血療法については,近年,大量輸血プロトコールの導入などにより,迅速かつ適切な輸血療法が患者予後改善に大きく寄与することが示され,フィブリノゲン製剤を始めとする各種新規製剤の開発も進められており,急速に進歩した領域です.このため,本学術総会では,大量出血症例に関するInternational Sessionsを,前ISBT 会長 Erica Wood 先生,前AABB 会長Dana Devine 先生にご相談させていただきながら企画させていただきました.外傷,心臓血管外科,産科領域での,世界的エキスパートでいらっしゃるMichael Reade 先生(オーストラリア),Jeannie Callum 先生(カナダ),Alexandre Mignon 先生(フランス)をお招きし,さらに,日本外傷学会,日本心臓血管麻酔学会,日本産科婦人科学会でご活躍の先生方にもご参画いただき,輸血・細胞治療学会の皆様方と,大量出血症例という予後の悪い疾患領域において,さらなる予後改善に向けて,どのような輸血療法が最適かについて議論,検討する企画とさせていただきました.

 また,新型コロナ感染症パンデミックにより一時中断しておりました台湾輸血学会との交流を長崎大学 長井一浩先生のご指導のもと,再開し,座長として台湾輸血学会の理事長でいらっしゃるTzong-shi Chiueh 先生もお招きし,今回は,台湾側と同様の演題を日本側からも呈示して,双方のデータを対比しながら討議を行う合同シンポジウムを企画いたしました.また,共催シンポジウムにも,数名の海外演者を招聘いただき,ポストコロナ時代を踏まえ,さらなる輸血・細胞治療の最適化に重要となる国際交流を深める企画を揃えさせていただきました.同時通訳も入りますので,ぜひ,海外の状況も踏まえ,本邦でいかに「患者を救う!適切な輸血・細胞治療」を確立すべきか,皆様とともに検討してまいりたいと思いますので,ぜひご参加いただけますようお願い申し上げます.

 これら以外にも,輸血・細胞治療が抱える諸問題について,チーム医療として,いかにそれぞれの職種が解決策を提示できるのかの検討など,様々な企画が目白押しとなっています.ぜひ,ご期待ください.また,一般演題において,最優秀演題賞候補演題を選択させていただきました.学術総会での発表を厳正な採点に基づき評価させていただき,最優秀演題に選ばれた演者の方々を,学術総会の閉会式で表彰させていただく予定です.ぜひ最後まで,素晴らしい講演をご堪能いただければと思います.また,本学術総会で得た知識や内容をお持ち帰りいただき,それぞれのご施設において,更なる患者予後改善を目指した輸血・細胞治療の議論,構築につなげていただければ,本学術総会の目指す最大の成果となろうかと思います.

 本学術総会は,5月10日からの開催となりますが,5月8日には,政府は新型コロナ感染症を「5類」に移行する方針としています.ポストコロナ時代の最初の学術総会の在り方を考える総会ともなろうかと思います.新型コロナ禍で培ったハイブリッド開催の利点を生かしつつ,少なくとも演者,座長の皆様方には現地にご参集いただき,コロナ禍で閉ざされつつあった対面による情報交換を復活させ,活気に満ちた学術総会として幅広く知識交流が深められるようにも配慮いたしました.特別講演として,東京大学の中須賀真一先生に小型宇宙衛星をテーマに,大変夢のあるご講演をいただくことにしています.また,感染症予防に配慮し,ポスターセッションも,従来のポスター貼付ではなく,デジタルポスターとミニ口演を組み合わせた新しい取り組みとして実施させていただきます.人数制限を設けは致しますが,会員懇親会も再開することとしました.学術総会の合間のひと時を皆さま方と楽しく過ごせる企画として「旅と音楽の夕べ」と題し、中原達彦合奏団 featuring大迫淳英氏による、コロナ禍でなかなかできなかった旅を続けながら車窓の風景を楽しむというコンセプトをもとに、映像と共に旅にちなんだ楽曲を演奏していただく予定です。美味しいお弁当、飲み物とあわせて、ぜひ学会のひと時をお楽しみください。旅行券などが当たるビンゴ大会も予定しています。

 5月初めの心地よい季節に,海岸近くの風光明媚な幕張の地で,皆様方のご支援を得て,ポストコロナ時代の一里塚としての学術総会となればとの思いも併せて,輸血・細胞治療のポテンシャルをさらに引き出し,患者予後改善につなげられる議論が深まるよう,努力させていただきますので,ぜひよろしくお願い申し上げます.

第71回日本輸血・細胞治療学会学術総会 総会長
宮田 茂樹
日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所

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